気軽に立ち寄れる“未来の住まい”―心地よさと省エネを備えた住まいを体感できる場所〈SHe〉
岩手県と秋田県にまたがる、雄大な焼石連峰。その北端に位置する駒ヶ岳の麓・岩手県金ケ崎町には、茅葺屋根の武家屋敷や田園風景といった、昔ながらの景色が色濃く残ります。そんな歴史と自然の景観が息づく町に、地域に開かれた場として2024年にオープンしたのが複合施設〈SHe〉です。

SUGOSU-HITOTOKI+e=通称〈SHe〉
〈SHe〉では、シェアオフィスやCNCルーターを導入したレンタルワークスペースを提供されており、同敷地内にはモデルハウスを兼ねたカフェスペース〈SUGOSU-HITOTOKI〉も営業しています。

SUGOSU-HITOTOKI
日々の暮らしに寄り添う場として、多くの方から親しまれている当施設を手がけたのは、岩手県奥州市に拠点を構える〈佐藤工務店〉様(以下、佐藤工務店と略称)です。1971年の創業以来、自社大工による高い施工技術、厳選された自然素材、そして岩手の厳しい気候に適応する高性能な家づくりを追求されています。
さらに、“これからの住宅の在り方”を見据えた取り組みとして、空気環境に配慮した健康住宅『SuHa(スーハ)』と、エネルギー収支を限りなくゼロに近づける『ZEH』を融合させた住宅モデル『SuHaZEH(スーハゼッチ)』の普及を推進しています。
当モデルでは、漆喰や木繊維断熱材などの自然素材を用いた空気環境にやさしい設計に加え、外皮性能の向上や太陽光発電による創エネ設備を組み合わせることで、快適な室内環境と高い省エネ性能を両立。住まいの快適性はもちろんのこと、ランニングコストの削減や環境負荷の低減にもつながる、未来志向の住まいづくりが実践されています。
多様な素材が調和する、開かれたファサード

〈SHe〉の外壁は、木材、塗壁、ガルバリウム鋼板という異なる素材で構成されています。これらは、金ヶ崎町の厳しい気候 (夏の高温・多湿、冬の積雪)を考慮し、意匠性と機能性を両立させることを目指した結果です。

全方位に開かれた八角形のフォルムが印象的。人とアイディアが集まる場を目指す〈SHe〉のコンセプトが体現されている。
施設の顔となるエントランスの外壁には、油分を豊富に含む屋久島地杉をご採用いただきました。18mm厚の板材を数センチずつ重ねながら張る「大和張り」で仕上げることで、最大36mmの厚みを確保。これにより、通気性を保ちながらも雨仕舞の性能を高め、外壁材としての耐久性を向上させています。
自然素材に包まれる、心地よさを追求した室内空間

棟内は、床・壁・天井に至るまで自然素材をふんだんに用いた空間が広がります。
壁には、接着剤を使用せず、石灰そのもので硬化する西洋漆喰を採用。調湿・消臭効果に優れており、高気密・高断熱の空間においても快適な空気環境を保ちます。
また、空間の用途や雰囲気に応じて、異なる木材を使い分けているのも〈SHe〉の特徴です。

造作デスクには、ホワイトアッシュの巾ハギフリーボードを使用。無垢板を巾方向にのみ接合しているため、一枚板のような高級感を味わえる。
例えば、事務所スペースの天井に設えられたヘムのパネリング。木目が通直で、全体的に軽やかな印象を与えるヘムは、落ち着いた空間づくりにぴったりな木材です。オフィスの機能性を保ちつつ、リラックスした雰囲気を演出します。

辺材と心材のコントラストを活かした張り方により、ウエスタンレッドシダーならではの意匠が際立つ。
一方、レンタルワークスペースの壁面には、豊かな色合いをもつウエスタンレッドシダーが部分的に用いられています。これが空間のアクセントとなり、創造力を刺激するような場が演出されています。

デジタルデータをもとに木材を高精度に加工できるCNCルーター「ShopBot」も使用可能。
また、同スペースの床全面には、北海道産カラマツを3層に重ねたパネルをご採用いただきました。積層構造により、優れた寸法安定性と曲げ強度が実現されており、その上にカラマツ特有の耐久性が加わったこのパネルは、木工や工作などの実作業を伴う環境にも適しています。
木繊維で包む、三層構造の高性能断熱
〈SHe〉は、外装や内装の仕上げにとどまらず、建物全体の“外皮性能”にも徹底してこだわられています。
断熱構成は、外付加断熱・充填断熱・室内付加断熱の三層構造。いずれも熱容量が高く、熱伝導率が低い木繊維断熱材を採用することで、夏の熱気や冬の冷気を効果的に遮断し、年間を通して安定した室温を維持する快適な住環境を実現しています。

シュタイコユニバーサルドライ(旧・シュタイコデュオドライ)
外付加断熱材として使用されているのは、ドイツ・シュタイコ社製の「シュタイコユニバーサルドライ(旧・シュタイコデュオドライ)」。四方にサネ加工を施したパネル形状により、外周部の気密性を高めつつ、ヒートブリッジ(熱橋)を抑制する設計となっています。断熱性と気密性を兼ね備え、省エネルギーかつ快適な暮らしを支える仕様です。
さらに、住宅性能を高める高性能木製サッシの導入や、太陽光パネルで発電した電力を室内で有効活用するなど、エネルギー効率と環境配慮を両立したサスティナブルな建築モデルが〈SHe〉において具現化されています。
最後に

『SuHaZEH』の空間を実際に体感しながら、仕事をしたり、お茶を飲んだり、ものづくりに集中したり──地域の暮らしに自然と寄り添い、誰でも気軽に立ち寄ることができる〈SHe〉。訪れた方が、快適な住環境をより身近に感じ、同時に“これからの住まい”について考えるきっかけに繋がっていくのではないでしょうか。
さらに、佐藤工務店では地元の小学生を対象とした鍋敷きづくりワークショップで材料提供を行うなど、教育・地域活性にも積極的に取り組まれています。今後も地域とのつながりを大切にしながら、住まいづくりを通じて、町の未来を育まれていくのだと感じます。
〈SHe〉を起点に、佐藤工務店が目指す持続可能な住まいづくりが、さらに広がっていくことを心より楽しみにしております。この度は、弊社の商材を多数ご採用いただき、誠にありがとうございました。
Photo:佐藤工務店
Text:yano
SHe(SUGOSU-HITOTOKI+e)
岩手県胆沢郡金ヶ崎町西根字古寺133-2
https://e-sugosu-h.com/
SUGOSU-HITOTOKI
岩手県胆沢郡金ヶ崎町西根字古寺133-1
https://e-sato-k.com/construction/sugosu-hitotoki/
設計施工:有限会社佐藤工務店
岩手県奥州市前沢白山字道ノ上1番地2
https://e-sato-k.com/
弊社納材商品
外壁:屋久島地杉
床:北海道産カラマツ3層パネル
天井:ヘムパネリング
内装壁:ウエスタンレッドシダーパネリング
造作:ホワイトアッシュ巾ハギフリーボード
断熱材:シュタイコユニバーサルドライ(旧・シュタイコデュオドライ)
シュタイコベース
ウッドファイバー
窓:ノルド木製アルミサッシ